線路の中に座っている人を見た話

コロナ禍になるちょっと前、私はたまに居酒屋に行ってお酒を楽しんでいた。
帰り道、酔って道路に寝ている人がいるのも、見慣れた景色だった。

とある冬の夜に歩いていたら、視線の先にしゃがんでいる高齢男性が見えた。

前から来た若い男性が、
「あんた、そんなとこに座ったらだめだよ。立ちなさい!」
と怒鳴った。

えらい剣幕だ…

ハッとした。

よく考えたらここは踏切。
男性は、線路の中に座っている。
よく通る道だけど、線路内に人が座ってるのを見たことがない。
異様な光景なのに、風景として見過ごしてた。

声をかけたのは一人だけで、みな素通りした。
私もそのまま素通りして、振り返ったら、二人ともいなくなっていた。

その後、コンビニに行くためにもう一度その付近を通ったら、さきほどの線路の男性が今度は歩道脇に座っていた。
悲しいような困ったような表情をしていて、よく見たら杖を持っていた。

座っている男性

認知症の方が徘徊しているのか?

認知症ではないか。
家族が探しているのではないか。
足が痛くて帰れないのではないか。

外見からはわからない。
冬の寒い日だったのに、コートも着ていなかったので、
「大丈夫ですか?寒いから家に帰らないと」と話しかけた。

しばらく返事はなかった。
焦点の合っていない目だったが、ゆっくり頷いたので、声は聞こえているし、意識もはっきりしていることがわかり、少しホッとした。

一人で助けられなかったので警察へ

杖をついて歩いている男性

どうしていいかわからなかったので、とりあえず交番に電話した。
すでに同様の通報があり、別の警官が向かっているとのこと。

後で人に話したら、
「刑事事件だったら疑われるから、面倒なことに首突っ込むのやめなよ」
と注意された。

えー…。

理由をきくと、火事の第一発見者になったら、犯人扱いされて不快な経験をした知人がいたらしい。

随分前の話なので、今の警察がそこまで人権侵害した聞き方をするかはわからない。

視界に入るものから目をそらすな

多くの人は、見知らぬ人が困っていたとしても、子どもは守っても老人は助ける必要がないとか、命の選別をする。

自分のことだけ考えて生きていたら、他人が抱えている問題には気付かない。

自分は大事にするが、他人に冷たい人が増えたように感じられるが、人間って、そんなに都合よく使い分けられない。

他人に冷たい人は、周りが見えていない。

自分を犠牲にしてまで人を助ける必要はないが、もうちょっと周りを見る余裕が必要なんじゃないかと思う。

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